Experience Prototypistのマルチリンガル子育て+プログラミングブログ

Design Thinking、語学(英語、中国語、韓国語)、日中マルチリンガル育児、littleBitsやRaspberry Pi, Arduinoを使ったExperience Prototypingネタ。

W+G双卡双待Android Lenovo A60

今回の中国+香港滞在中、最も役に立ったのが(前回の成都訪問時に購入した)Lenovo A60というAndroidケータイだ。

大きさは横にあるiPhone 4Sとほぼ同等でやや厚めといったところである。後方に見える箱に書いてある「W+G双卡双待」がまさにこのケータイの特徴、つまり、2枚のSIMカードを刺すことができ、さらにその2枚で待ち受けができるという優れものだ。ただし、W+Gで意味しているのは、1枚のSIMはW-CDMAで(つまり音声+高速データ通信)、もう1枚のSIMはGSMで(つまり音声+低速データ通信)で通信が可能だ。

実際にカードが2枚刺さった状態の写真がこちら。

キャリア名としてChina UnicomとChina Mobileの2キャリアが並び立っているのが見てわかるかと思う。

ここでおさらいしておくと、中国には携帯電話キャリアが3社あり、それぞれ次のような2G/3Gサービスを展開している。

キャリア名 2G 3G コメント
中国移動(China Mobile) ○(TD-SCDMA) 3Gは中国独自方式
中国聯合(China Unicom) ○(W-CDMA) 3Gはdocomo,SoftBankと同一方式
国電信(China Telecom) ○(CDMA2000) 3Gはauと同一方式

ただし、注意しておかないといけないのは、2Gと3Gは完全に別の契約である、ということである。2Gで契約したSIMカードを3G対応の携帯に刺しても3Gで通信できるようになったりはしない(一方、3Gで契約したSIMカードを2G対応の携帯に刺すことはできる)。さらに中国でも一部でMNPは始まっているが、大多数のユーザーはプリペイド契約をしており、2Gの契約を同じキャリアで3Gに契約替えしたり、MNPで別キャリアに移る際に3G契約に変更してというのは実質上、存在しない。

したがって、2Gユーザーが3G(=高速通信を前提とするスマートフォン)も使いたくなったらどうするのか?という問いに対しては、街で3G対応のプリペイドSIMカードを買ってきて(新しく買ってきた3G対応の)携帯に刺して使う、というのが一般的な話となる。

さて、この場合、想定される選択肢はいくつかあって、

  • 2Gの携帯と3Gの携帯を2台持ちする
  • 3Gの携帯を1台持ち。2Gの電話番号の友人には電話番号が変わった旨伝える(電話番号は音声通話以外にSMSで使われている点に注意が必要)

そして、3番目の選択肢が、

  • 本機のような双卡双待のケータイを買い、2Gは引き続き音声通話+SMSで使用、3Gはデータ通信のみの契約をする

というものだ。

本機Lenovo A60も3番目の用途を望むユーザーにフォーカスしたAndroidスマートフォンである。本体裏を見ると中国聯合(聯通)のロゴが入っている。

ここだけ見ると、日本のようにキャリアが(メーカーから端末を買い上げて)端末をユーザーに売っているというようなビジネスモデルであると思われがちなのだが、先ほども説明したように、携帯電話は主にプリペイド契約で使われる(=端末の購入のタイミングとキャリアとの契約(=SIMカードの購入)のタイミングは全く別)なので、この端末が欲しいのであれば、中国に行けば身分証明書を提示したり、同時契約することなく(日本人でも)定価で970元(=12,000円弱)で購入可能である。ちなみに中国はSIMロックのない国である(3Gに関してはキャリアごとの互換もないので)。いくら中国でもAndroidスマートフォンが970元というのは安いのだが、それは本機種がLenovoのケータイというよりは聯通の戦略機種だからというところもある(プリインストールアプリも聯通関連のアプリが多数搭載されている)。

ちなみに本機種の聯通版ではなく、純粋なLenovoブランド版はフィリピンでリリースされている。フィリピンもケータイ大国(SMS大国)で、かつ契約のほとんどはプリペイド契約で、かつ今が2Gから3Gへの移行(共存)時期ということで、この手のケータイに対するニーズが非常に高いのである。

他に、ネットを漁るとロシアで使っているユーザーが多いというところに行き当たる(勝手にロシア語対応のファームをばらまいている人がいる)というのも同様の状況、かつ、中国で買ったケータイをロシアに持ってきて使うという一連の流れがすでに確立している(どのみち中国で購入したケータイは前述のとおりSIMロックがかかっていないので)という理由も指摘できよう。

さて、普通の日本人が本機を普通のAndroidスマホとして使う上で一番の障害は(UIが中国語というのもあるが、これが英語で我慢していただくとして)、Googleのアカウントに対応していないということであろう。つまり、GmailIMAP(やPOP)で見ることはできるが、それがGmailアプリでGmailとして見ているのではなく、EメールアプリでIMAPメールとして見ているに過ぎない。購入後、初回起動時にGoogleのアカウントを登録するといった(普通のAndroidである)プロセスが本機には存在しないのである。その結果、Androidマーケットも使えないし、Googleマップも標準で用意されておらず、GoogleカレンダーGoogleコンタクト等、Googleのアカウントに連動する各種機能が一切存在していない。

これはなぜかというと、Lenovoの問題や聯通の問題ではなく、単にGoogleのサービスが中国では未提供だから提供していないというそれだけの話である(したがって、住所が中国国内のユーザーはAndroidマーケットも使えない)。さらにYouTubeのように中国では(Great Firewallに阻まれて)使用できないサービスもある。

ただ、良くしたもので、先ほどのフィリピン版のA60のように、Lenovoの海外バージョンのケータイは一般Android仕様になっていることから、本機を普通のAndroidにするためのファームウェアも世の中には出回っているので、自己責任で焼き直せば、普通のAndroidスマートフォンとして使えるという素晴らしい結論でした。私もGlobal Android仕様のファームを焼いて使っております。

さて、ここまでは聯通仕様(つまり、GSM+WCDMA)のSIMカード2枚刺しケータイについて紹介してきましたが、中国電信仕様(つまり、GSM+CDMA2000)というのもあり、主にモトローラからリリースされている。また、スマホにこだわらない(Android OSでなくてもよい)のであれば、Samsung/AnyCallからさらに安価なものがリリースされているが日本語が使えないことには注意が必要である(別の言い方をすればAndroidであれば日本語対応は用意である。一部漢字が中華フォントという問題はあるが、私のように日本語も中国語も(もっと言えば韓国語も)1台で使いたいというのであれば、これがベストの解ということになる。

なお、WCDMA+WCDMAでSIM2枚同時待ち受けができるスマートフォンがあれば、日本でもたとえば会社のdocomoケータイのSIMカードとプライベートのSoftBankSIMカードを1台のケータイで同時に使用できる(セコい言い方をすればデータ通信は会社が通信費を負担するdocomoにすべて投げてしまい、SoftBankは通話とSMSしか使わない)という神業ができるのだが、これが技術的に(チップセットの仕様上)ありえない。もちろん、通信チップ+モデムを2系統備えれば実装できなくはないが、そういった製品が出てくることはないだろう。別の言い方をすれば、本機は通常は1枚のSIMと連動する通信チップ+モデムをWCDMA部分とGSM部分に切り離して、それぞれに別のSIMカードと紐付けをしている(したがって、SIM1枚のケータイと電池消費上も大差ない)というのが技術上の種明かしであり、逆にWCDMAに紐づいたSIMカードのキャリアに関しては、(WCDMAの電波が届いていない場合に代替として)GSMで通信・通話するということはできないことに注意は必要だろう。