Experience Prototypistのマルチリンガル子育て+プログラミングブログ

Design Thinking、語学(英語、中国語、韓国語)、日中マルチリンガル育児、littleBitsやRaspberry Pi, Arduinoを使ったExperience Prototypingネタ。

言葉をおぼえるしくみ

母語の習得の際、頭の中では何が行われているのだろう、というのは少なくとも私にとっては、大学時代にChomskyに触れたときからの関心事です。頭の中には文法装置的なものがあって、触れた言語によってパラメータが設定され(日本語は名詞+後置詞(助詞)だけど、英語は前置詞+名詞とか)、最終的に、言い間違いなどを含む不完全・不十分な言語接触から一つの母語が出来上がる、というのは私にとって非常に説得力のある理論でした。

今回読んだ「言葉をおぼえるしくみ」も大きく言えば、そういった言語生得説を強化するような内容の一冊。文庫サイズですが全12章構成で、名詞、動詞、形容詞、助数詞、擬態語といった単語カテゴリごとに、ダミーな語との音声的な接触(nekeる、のように実際に存在しない単語)+視覚情報(その時に何が見えているか)で被験者である赤ちゃんがどう反応したのかを綴った本です。要点をつかむというよりは一資料として結構な情報量があります。

言葉をおぼえるしくみ: 母語から外国語まで (ちくま学芸文庫)

言葉をおぼえるしくみ: 母語から外国語まで (ちくま学芸文庫)

 

 また、日本語に限らず、英語・中国語の母語習得に触れた箇所もあります。英語であれば、冠詞の有無や複数形の有無により、赤ちゃんにとっては触れた名詞が一般名詞なのか(モノ的な可算名詞なのか、概念的な不加算名詞なのか、はたまた個別的な固有名詞なのか)といった意味で情報量が豊富な反面、日本語は少なくとも音声的には名詞が固有名詞か一般名詞かを判断する材料はない、ということになります(私個人としては反論があって、一般名詞の花や熊と、固有名詞(人の名前)のハナやクマとではイントネーションが違う、といったようなことが、同じ音の花とハナ以外にもありそうな気はします)。

バイリンガル的な、一度に複数の言語に触れて育った際に、どういった脳内過程を経て言語習得がされるか、という話はなく、あくまでもモノリンガル的な目線ですが、情報の網羅性から考えても、子供の言語習得という意味では議論のベースとなる一冊であることは間違いありません。今井むつみさんはもう少し入門的な1冊「ことばの発達の謎を解く」も書かれているので(私はまだ読んでいませんが)、私のような言語オタクでなければ、そちらの方がお勧めです。 

ことばの発達の謎を解く (ちくまプリマー新書)

ことばの発達の謎を解く (ちくまプリマー新書)