Experience Prototypistのマルチリンガル子育て+プログラミングブログ

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iPhone with iCloud, without PC/Mac - スマートフォンのデバイス管理という視点 (3)

たとえ当初の導入が物珍しさから始まったとしても、iPhoneiPadAndroidが今後、ノートPCを使っていたモバイルワーカー(というのは何も特殊な人を指しているのではなく、会社のデスク以外の場所でも仕事がある人といったくらいの意味合いですが)にとって、ノートPCを置き換える業務支援端末となることは間違いないでしょう。あるいは生産性工場の支援ツールと呼んでも良いかも知れません。

一方で、これまで指摘してきたように、管理、つまりデバイスの設定や、各種データソースへのアクセス設定、アプリケーションの配布やデバイス情報の取得、さらにデバイス紛失時のロックやワイプ(データ削除)といった機能が必須となってきます。OSの機能として提供されるこういった機能を、MDMアプリケーションはワンストップで中央管理し、問題点があればIT管理者やエンドユーザーに通知するというのが主な機能ということになります。

そのOSの機能ですが、iPhoneiPadにせよ、あるいはAndroidにせよ、スマートフォンベンダからOSの更新(あるいはファームウェアの更新)といった形でしばしば提供されています。更新には、機能の追加や改善という側面に加え、セキュリティーに関わる問題点の修正という側面もあります。ただし、注意しないといけないのは、iPhoneにせよ、iPadにせよ、Androidにせよ、往々にしてOSの更新にはPCなりMacが必要である、ということです(しばしば「母艦」と称されます)。

iPhoneiPadの場合、iPhoneiPadを買えばそれですぐに使える、というのではなく、Windows PCやMacと組み合わせて、インストールされたiTunesと連携を取りながら動作するというのが標準的な使い方となります。最初に「ノートPCを置き換える」というふうに言っておきながら、実はノートPC(なりデスクトップPC)を捨てきれないというのが現状、問題点としてあります。導入を考えている企業からすれば、それならこれまで通り、ノートPCでいいじゃん、という話になってしまうかと思います。

そういう意味では、およそ自分の業務に関わるデータというものが自分のPCの中に格納されており、必要なデータだけをその場その場で端末(スマートフォン)に同期して使う、というWindows CE時代のPDA的利用法から抜け切れていないのではないかとさえ言えます。PDAと違い、スマートフォンはインターネットへの接続性を備えた端末であるにもかかわらずです。インターネットへの接続性をスマートフォンが備えているのであれば、これまでのデータはPCから持ち出すのではなく、クラウド上に移行してしまい、PCにはさよならを告げてしまえばいい、これがスマートフォン屋として語るべきメッセージのように思われますが、現実のスマートフォンの実装は、多かれ少なかれPCに寄りかかっているという、マーケットメッセージと現実の実装との間での不整合が依然として存在しています。

さて、話はiCloudです。Appleicloud.com というドメイン名をiCloudというサービスを提供していたスペインのXcerionから取得しました(一方で、Xcerion社はドメインを変えて cloudme.com でCloudMeという、これもどこかで聞いたような聞かなかったようなサービス名で従来のサービスを提供しています(http://www.cloudme.com )。そもそもiTunesで購入した楽曲をわざわざダウンロードしなくても、聞きたいときにその場その場でダウンロードして聞ければいい、というのはそれはそれでもっともな考え方かと思います(特に私のように64bpsのHE-AACでCDをリッピングしていても、iPhone 4G 32GB程度では入りきらないヘビーリスナーにとっては)。何も楽曲に限らず、写真でも、住所録でも、カレンダーでも、およそデータと呼ばれるものであれば同じアプローチを取りえるでしょう...充分な回線速度と賢いキャッシング機構の恩恵を受けられるのであれば(ちなみに米国のAmazon.comが提供するAmazon Cloud Playerは同様のコンセプトをiPhone上でもすでに実現しています)。

一方、従来もiTunesでのアプリ購入や楽曲購入はiPhone単体でも可能ではありました(ただし、サイズの上限が20MBのため、辞書系のアプリは軒並みアウト)。一方でiPhoneのOS更新時にはPC/Mac上のiTunesでCD-ROM1枚程度のファイルをダウンロードしています。スマートフォン側では技術的には何ら問題ないかとは思いますが、OSを配信する側と回線側(=通信キャリア)にはかなり負担をかける結果となるのは目に見えています。回線側のオーナーがOK、というのであれば何ら問題ないだろう、ということで、Apple and Verizon to deliver over-the-air iOS updates to Verizon iPhoneなんて記事も上がっていたりします(http://www.9to5mac.com/64928/apple-and-verizon-to-deliver-over-the-air-ios-updates-to-verizon-iphone/ )。

スマートフォンは母艦のくびきから解き放たれ、飛び立つことができるのでしょうか?−(4)に続く