『半島を出よ』のあとがきに
『昭和歌謡大全集』という小説の登場人物の生き残りとその新しい仲間が福岡でテロを計画しているが、それより先に北朝鮮のコマンドが福岡を制圧してしまう、そういった構想の作品を十年くらい前から考えていた。
と書かれているのを読んで、『半島を出よ』読了後、早速購入したのが『昭和歌謡大全集』。帯には「半島を出よ」のイシハラとノブエの狂気の青春。と書かれています。
もともとが週刊プレイボーイの連載だったということで、テンポ良く読み進められた。山羊さん郵便のごとく、オバさん側とイシハラ側で人が交互に死んでいくというストーリー。昔ならこういうのを(カフカみたく)不条理と呼んでいたのかも知れないが、オバさん側が最後に殲滅されてしまうというのは、ある意味、予定調和的というか何というか。イシハラたちに目覚めがあったように、オバさん達にも目覚めがあったんじゃないかなぁという気もしたので。ただ、元オバさんがストーリーを引っ張っていくような小説を村上龍が書くとも思えないので、そういう意味では「元」オバであっても、村上龍の小説の中では自己完結的な存在以上にはなれないということか。
ちなみに、『半島を出よ』関連では、他に『五分後の世界』と『ヒュウガ・ウイルス−五分後の世界II−』が帯に取り上げられていました。